UIUXの改善に携わるにあたって、あまり話題に挙げられないのは「費用対効果」についてです。

費用対効果とはその通り、「投資した費用に対して、どのくらいのリターンが得られるか」という意味の言葉になります。

ここで基礎概念として理解しておくべきは、デジタルプロジェクトは投資である、ということです。

投資にはもちろんリスクが付いて回ります。そのため、デジタルプロジェクトにおけるUIUXの改善が、どの程度費用対効果を見込めるのか、ということは、可能な限り正確に試算する必要があります。

そして、その費用対効果は計算することが可能です。

もしあなたがUIUXの改善に対して、どの程度の金額、人員を投資できるかを決定、あるいは上司に提案できる立場にあるならば、
是非今回ご紹介する計算式で、「どの程度の予算でどの程度の改善を行うのがいいのか」ということを考えてみてください。

では、以下より細かく解説していきたいと思います。

デジタルプロジェクトの基礎概念 ~投資である、とはどういうことか~  

繰り返すようですが、デジタルプロジェクトは投資です。

ここで一度、投資がどういう意味を持つ言葉なのかを再確認しておきましょう。

投資とは、主に経済において、将来的に資産、ないし生産能力を増加させるために、現在の資本を投じる活動を指します。

どのような形の投資も、不確実性が伴うのが原則です。不確実性とはつまり、「投じた資産が減ってしまう、あるいはなくなってしまう」というリスクのことです。

一方で、そのリスクを乗り越えれば、ただ働くのとは一線を画するほどのリターンが得られるでしょう。

つまり、デジタルプロジェクトが投資、という言葉には、以下のような意味が含まれています。

労働とその時間に対応して必ず帰ってくる給料とは違い、デジタルプロジェクトは成功するか失敗するかも確約されていません。UIUXをどれだけ人員と期間を投じて、どれだけ頑張って改善しても、売り上げにつながるかどうか、という点は定まっていません。

また別の側面として、投資は賭け事ではありませんので、長期の時間を要します。特にデジタルプロジェクトでは、数か月、数年という長い時間をかけてやっと効果が現れる場合も多いです。

ですがデジタルプロジェクトはその分、人手さえあれば障壁なく着手可能な、夢のある事業でもあります。現在GAFAと呼ばれる世界的大企業は、そういった投資を乗り越えて絶大なリターンを勝ちとり、ああまで大きくなりました。

そのため、デジタルプロジェクトは投資である、という基礎概念は、「デジタルプロジェクトの完成のためにはリスクも資産も時間も必要で、絶大なリターンの獲得という夢もあるが、完成後の成功は誰も確約してくれない」という事です。

である以上、デジタルプロジェクトにおけるUIUXの改善のためには、リスクとリターンを試算して、どの程度の費用対効果が見込めるか、ということを考える必要があります。

費用対効果の計算方法  

UIUXの費用対効果を考えるにあたって、まず知っておかなければならないのはROIという計算式です。ROIはリターンオブインベストメントの略で、そのまま費用対効果を計算する式となります。

このROIが100%を越えてくると行うべき投資と判断することが出来ます。
ROIは、以下のような数式となります。

利益÷投資額×100=ROI(%)

つまり、ROIを出すためには、利益と投資額を判明させなければならない訳です。

また、この内利益は以下のような計算式で出すことが出来ます。

売上-売上原価-投資額=利益

売上は文字通り売上ですね。デジタルプロジェクトですので、原価は存在しません。投資額は人件費やPCなどの設備費などが該当します。

そのため、以下のように簡略化できます。

売上-投資額=利益

この内、UIUXの改善ということはすでにリリース済みでしょうから、どれだけの売上がUIUXの改善で発生するかは想定が出来ていることと思います。ですので、今回は、投資額をどのように計算していくか、ということに焦点を当てていきたいと思います。

投資額の算出のために、以下の三点についての計算式を活用することが出来ます。

・エラーについての計算式

・開発コストと維持費の計算式

・生産性の計算式

では、それぞれ説明したいと思います。

エラーについての計算式  

突然エラーについての計算式、と言われても面食らうと思いますので、そもそもエラーについての計算式とは何かを説明します。

「エラーについての計算式」とは、デジタルプロジェクトについて回るエラーの改善、除去のためにどれだけの資金がかかってしまうのか、ということに対する計算式です。

この計算を行うことで、エラーに対して会社がどれだけの資産を投資しなければならないのかが分かります。

計算式は、以下の通りです。

(エラーの数) x (修正時間の平均) x (雇用者のコスト) x (雇用者の数) = エラー除去にかかるコスト

例えばエラーが週に3つ、修正時間の平均が2時間、雇用者の時給が基本として3千円で、エラー担当者が10人いる会社なのだとすれば、

3 x 2 x 3000 x 10 = 180000

となり、エラーで週に18万円のコストがかかることが分かります。

開発コストと維持費の計算式  

開発コストと維持費の計算式は、その通り開発コスト、維持費を計算する式となります。

計算式は、以下の通りです。

(変更数) x (平均時間/変更) x (開発者の数)x (雇用者のコスト) =開発コスト、維持費

例えば仕様変更数が5つ、対応平均時間が8時間、開発者の数が10人、雇用者の時給が基本として3千円だとすれば、

5×8×10×3000=1200000

となり、120万円ものコストがかかることになります。

生産性の計算式  

最後に、生産性の計算式です。

生産性の計算式は、節約できたコストを算出するのに役立ちます。

計算式は、以下の通りです。

(節約した時間) x (雇用者のコスト) x (雇用者の数) = 節約したコスト

節約できた時間が2時間、雇用者は時給3000円、雇用者の数が総勢で20人いたとすれば、

2×3000×20=120000

合計で、12万円のコストカットに成功したこととなります。

まとめ  

以上の式を活用することで、UIUX改善に必要な投資額を算出することが出来ます。そして投資額を算出することが出来れば、ROIの計算式に掛けることで、費用対効果を算出することが出来ます。

基本的な流れとしては、

エラーの除去に発生するコスト+開発維持費-制約できたコスト=UIUX改善にかかる投資コスト

そして

売上-投資額=利益

によって利益を算出し、

利益÷投資額×100=ROI(%)

の式で、ROIを算出することが出来ます。

あなたの会社で行おうとしているUIUXの改善が、この式に当てはめて、本当にROIとして投資する価値があるのか。是非一度、計算してみてください。