BtoBサイトにおいての目的は、顧客企業から案件を受注することです。
そのための、デジタル的な入り口として活躍するのがBtoBサイトとなります。ですが、イメージとして「BtoBサイトはPCで見るものなのでは?」と考えている方も多いでしょう。
その前提で考えるならば、BtoBサイトにおけるスマホデザインは、こだわる必要があるかどうか疑問視せねばならない対象となります。
ですが実際にはどうなのでしょうか。だれがBtoBサイトを閲覧するのでしょう。どんなタイミングでBtoBサイトは閲覧されるのでしょう。BtoBサイトはPCで見るイメージでしたが、実際のところはどうなのでしょう。
結論を述べます。BtoBサイトでもスマホは必要ですし、スマホデザインはこだわるべき重要な点となります。
では、それは何故なのか。そちらについて、共に考えてまいりましょう。
BtoBサイトの閲覧者は一体誰なのでしょうか。
顧客企業の社員であることに疑いはないでしょう。問題は、そこからどのように絞り込んでいくかです。
まず前提を整理しましょう。BtoBサイトが案件成約に至るまで、どんなプロセスが踏まれているのでしょうか。
BtoBの案件は、基本的に高額なものばかりになります。そういった商品・サービスを衝動買いなど出来るはずもありません。
そのための仕組みとして、稟議というものがあります。これは資料などにまとめられた商品・サービスの情報を、様々な立場の社員が確認し、全員の認可を経て承認、購入がなされるという仕組みです。
この仕組みを介さない企業はほぼないと言っても過言ではありません。つまり、BtoBサイトの情報は、稟議資料を介して顧客企業の様々な社員に回覧される、と認識してもよさそうです。
ですがそれは、BtoBサイトを全員が訪れる、という意味ではありません。
回覧されるのは、あくまでBtoBサイトの情報がまとめられた「資料」にすぎません。それは稟議を通して目を通されますが、資料にはデザインまでまとめられているとは考えにくいでしょう。
つまり、BtoBサイト、ひいてはデザインを直接閲覧するのは、資料作成者ただ一人と推測できます。
それは誰なのか。
答えは、「上司に稟議資料をまとめるよう指示された一般社員」です。
彼らは他の業務の合間を縫って、短い時間でサイトを閲覧し、資料にまとめます。そのため、彼らは理解が飛びぬけて困難なサイトは無視して資料作成に臨むでしょうし、中々要点にたどり着けない情報も、時間の無駄と切って捨てるでしょう。
そんな彼らがもっぱら活用するのは、冒頭の通りPCでのBtoBサイトです。何故なら、業務時間中はスマホを取り出すのも禁止されている前時代的な企業も存在する面もありますし、なによりスマホでは簡単にサイトからのコピー&ペーストで情報を資料にまとめ辛いというのもあります。
では、BtoBサイトにおいて、スマホデザインはこだわる必要のないものなのでしょうか。
答えは、いいえ、です。
それが何故なのか。BtoBサイトを閲覧し、資料にまとめる一般社員に立場になって、考えていきましょう。
BtoBサイトは、どの時間帯に閲覧されるのが一般的なのでしょうか。
順当に考えるなら、業務時間中です。つまり一般的には、朝9時ごろから夜6時ごろまでのどこか、となるでしょう。残業の多い昨今では、もう少し後ろにずれ込むかもしれません。
そのときに使用される媒体は、前述の通りPCとなります。理由は、スマホを取り出せない雰囲気の会社が今でも多いから、単純に作業効率がPCの方が上だから、です。
この前提で考えると、ますますスマホデザインは、さして考慮に入れる必要のない優先度の低いものに感じられます。
ですが、閲覧者は、本当に業務時間しかBtoBサイトを訪れないのでしょうか?
それを考えるには、まず閲覧者の生活を想像してみる必要があります。
起床は朝8時くらいでしょうか。人によってはまちまちでしょうが、大体このくらいの時間帯が想像しやすいでしょう。そこから顔を洗い、歯を磨き、朝食を済ませる。朝の日課に掛けられる時間は、だいたい30分から1時間程度です。
そこから家を出て、通勤の時間となります。駅までの道のりを進み、そして電車に乗る。電車に乗って取り出すのは、当然スマートフォンでしょう。現代人の必需品です。
ここで、一般社員は何を見るのでしょうか。
通常の業務しかないタイミングであれば、恐らくニュース、SNS、ないし何らかのソシャゲを立ち上げてプレイすることでしょう。通勤中の隙間時間は、そういった要素で埋められるのが常です。意識が高ければ、電子書籍で読書でもするでしょうか。どちらにせよ、スマートフォンで暇な時間を活用するのが現代人的な動きです。
ですが、BtoBサイトの調査を行っているタイミングだったならどうでしょうか。
少しでも業務を円滑に進めるため、業務時間の資料をまとめるほどの精査は行わないにしろ、ざっとスマホでBtoBサイトを訪れ、資料にまとめるべきサイトをピックアップするのに時間を活用するのではないでしょうか。
そして、その時に閲覧されるのは、BtoBのスマホデザインです。
もう、お分かりでしょう。
そのときに閲覧したBtoBサイトのスマホデザインが、もし明らかにずさんなものだったならどうなるでしょう。閲覧者はこのように考えるはずです。「このサイトの商品・サービスはダメそうだ」。そうなれば力を作って作成したはずのPCサイトにも訪問してもらえないはずです。
つまり、BtoBサイトのスマホデザインは、朝の通勤時間で閲覧される可能性が高い存在と言えます。その役割は、「業務時間に閲覧してもらうための入り口」となります。BtoBのサイトデザインが案件成約までの入り口としての役割を果たすとするなら、スマホデザインは「入り口の入り口」の役割を果たすのです。
確かにBtoBサイトを訪問する人の全てが閲覧するデザインとは言い難いです。しかし、空き時間を活用して業務を円滑に進めようとする有能な社員ほど、スマホデザインを閲覧する可能性が高くなります。
そんな有能な社員が唸るほど、分かりやすく洗練されたデザインが、スマホページとして存在していたならどうでしょうか。社員は時間の効率化のため、業務時間でも真っ先にそのページの情報を資料にまとめ、情報としてもスマホデザインの優れたページが稟議に通りやすくなるように仕向けてくれるかもしれません。
そのため、「BtoBサイトのスマホデザインはこだわるべきか」という問いに対しての答えは、「強くお勧めします」となります。
とはいえ、じゃあ実際にどのようにこだわるべきか、という点が、疑問として残るでしょう。
今回はメイントピックではないので、補助的にそちらについて説明いたします。
BtoBサイトのスマホデザインでは何を心掛ければいいか。という事を考えるにあたって、前提となるのはやはり役割でしょう。
BtoBサイトのスマホデザインの役割は何だったでしょうか。そう、前述の通り「PCサイトという案件成約の入り口」への入り口です。
想定閲覧時間は通勤時間です。隙間時間にあたる時間帯のため、業務時間以上にタイトな閲覧時間と考えるのがよさそうです。
となれば、話はそう難しくありません。
まず挙げられるのは、「必要な情報を網羅する」という役割は、PCサイト側に任せられる、という点です。スマホデザイン側で必要なのは、ざっくりとした理解が迅速に得られることでしょう。
また、閲覧者に「このサイトをまとめれば調査業務はほぼ終わったも同然」と認識させられるだけの魅力も重要となります。となると、スマホサイトは本質的に「個人向け」で「魅力の要素が強く」「ざっくりとした理解が得られればいい」という、どちらかというとBtoCサイトっぽさがあることが分かります。
注意点としては、PCサイトとの雰囲気がかけ離れないようにすべき、というところでしょうか。スマホデザインの役割に目がいきすぎてPCサイトとデザインが離れてしまうと、閲覧者は同一のBtoBサイトであると認識できずに、混乱してしまうかもしれません。
以上の3点
・魅力的なサイトデザインであること
・ざっくりとした理解が迅速に得られること
・PCサイトと雰囲気が一致していること
が、BtoBサイトのスマホデザインで心がける点と考えるのがよいでしょう。
BtoBサイトのスマホデザインは、PCサイトデザインへの入り口としての役割があることが分かりました。そのため、PCサイト同様に、こだわる必要があります。
実際にその役割を果たすために重要なのは、通勤時間という短い閲覧時間で閲覧者にアプローチするため、1、魅力的なサイトデザインであること。2、ざっくりとした理解が迅速に得られること、3、PCサイトと雰囲気が一致していること。の3点です。