BtoBのUIデザインをデザイン会社に頼みたいから、調べておいて。そんな指示が上司から降ってきたとして、知識がないと困惑してしまうでしょう。

それもそのはず。普通「このくらいのデザインならこのくらいの費用感」と知っている人は、それこそデザイン外注になれた担当者の方くらいのものだからです。

ですが、実態として「このUIデザインの値段はこのくらい」と判断するのは非常に難しいとここに明言いたします。何故なら、UIデザインのためにかかる費用は、UIデザイン以外の作業にも費やされるためです。

では結局、BtoBのSaasのUIデザインを発注するためにはどのくらいのお値段がかかるのか。それはピンキリで、安ければ15万、高ければ100万にも上ります。

それほど、デザインの外注には幅があるという事です。ですが、15万で頼んだはずのUIデザインは安かろう悪かろう、という訳でもありません。一方で、100万のUIデザインが15万のデザインの7倍近く質がいい、というと、それもまた違います。

ですので、ここでは「UIデザイン料金がどんな要因によって左右されるのか」ということについて、お話したいと思います。

その要因の一覧は、以下の通りです。

・UIデザインの画面、アクション数
・UIの複雑さ
・デザイン会社の専門知識量
・デザイン会社のヒアリングの丁寧さ

以上四点についてお話いたします。

なお、今回説明するのは、あくまで「デザイン」に着目した説明であることをご理解ください。開発、つまりコーティングなどを含めると、さらにピンキリとなっていきますので、今回は説明を省かせていただきます。

ではそれぞれ、どういう理由でこの値段感なのかを説明していきたいと思います。

UIデザインの画面数  

UIデザインの画面数が増えると、当然デザイン費用は比例的に増えていくことでしょう。何故なら、その分だけデザイン数が増えていくためです。

こちらの要因は、とてもシンプルで納得のいくものなのではないでしょうか。クオリティが高い低い、というのではなく、ただ単純に作業量が増えるために、費用が増えていく、というものです。

ですので、「この機能を持った画面も欲しい」「ああそうだ、その画面も競業他社のSaasには備わっていたな」という軽い気持ちで発注してしまうと、その分費用が膨れ上がっていくことを理解すべきでしょう。

また、デザイン会社側にも、プロジェクトに割ける人数の限界があります。何が言いたいかというと、発注する画面デザイン数が増えれば増えるほど、開発期間が延びてしまう、ということです。

上司から言われている期限と費用感から、可能な範囲で発注することを心掛けるのがよいでしょう。もし上司にその辺りの理解がないようでしたら、以上の論理で説明し、説得することをお勧めいたします。

UIの複雑さ  

UIの作業量が増えて費用が増えるのであれば、難易度が高くなればもちろんその分費用も増えるのは、自明の理と言えるでしょう。

複雑なUIは、整理して使いやすいUX、使用感に落とし込むのが困難な作業となります。そのUXがそのままアプリの評価、ひいては売り上げにつながることを考えると、生半可なデザインは出来ません。

つまり、UIが複雑であればあるほど、その整理に取られる時間が増える、という意味で、費用が増えていくのです。

フェーズとしては実際のUIデザインの前段階、プロトタイプを作る、という段階での作業になるかと思います。この辺りで重要になってくるのは、ヒアリングでしょう。デザイナーと発注元が考える分かりやすさ、使いやすさは違います。

そのすり合わせのためには、お金だけでなく多くの、担当者側でも多くの時間を費やす必要が出てきます。一度目のヒアリングの段階ですべてが伝わっていればいいですが、そんな都合のいいことは起こらないと言っても過言ではありません。

担当者の方には、「お金を払ったのだからあとはうまいことやってくれるだろう」という考えを、早々に捨て去ることをお勧めします。

もしそんな認識であれば、あなたはきっと「前に説明したのに何で全然イメージと違う成果物が上がってくるんだ?」という悩みに苛まれるでしょう。その度にリテイクが発生し、またも違うものが上がってきて、最終的には炎上プロジェクトと化すのです。

先に言っておくと、それはヒアリングを丁寧にしなかった発注元、外注先両方の責任です。そして、そうならないための炎上を避ける第一歩が、認識を変える、という事なのです。

では、どんな認識をすべきなのか。私のお勧めは、お金を払って、一時的にデザインのできる従業員が増えた、という認識です。同僚として密にやり取りし、質の高いBtoBSaasのUIを作り上げる。そんな志を同じくした仲間である、という考えのもと、デザイン会社側のヒアリングに応じるのがよいでしょう。

そして、そのヒアリングにも工数がかかり、その分の費用も掛かります。実は外注側に知識があったり、ヒアリングが丁寧だったりすると、発注元のヒアリングが適当だったとしても、意外に何とかなったりします。

では、そんなデザイン会社は、ヒアリングが難しいデザイン会社と同じお値段で発注できるのでしょうか?

ここに断言いたします。そんな都合のいいことはありません。

デザイン会社の専門知識量  

デザイン会社といっても、業務の幅は様々です。

BtoB専門のデザイン会社もあれば、BtoCをメインフィールドと定めるデザイン会社もあるでしょう。ゲームのUIが得意だ、という会社もあれば、サイト制作の経験が豊富だったり、LPの実績がたくさんあったり、Saasに自信があったりと会社によって様々です。

そこで差が出るのが、そのプロジェクトに対する知識量でしょう。

それぞれのプロジェクトに対する知識量が豊富であれば、少ないコミュニケーションでも、デザイン会社内にたまっているノウハウ、定石によって、初めからイメージ通りのものが返ってくる可能性は十分にあります。

ですが、それはそのデザイン会社にとっての財産のようなもの信用があり、実績があり、何より知識があるデザイン会社は、その分多くの費用を要求することでしょう。

しかし、ここで勘違いすべきでないのが、「その方が安上がりなこともありうる」という事です。もし担当者側がSaasの知識にも疎く、どんなイメージのデザインが欲しいかも明言化できないような状況であったなら、大人しく知識豊富なデザイン会社に一任するのも賢い手です。

例えば物流系や、ネットワーク系のSaasは密にヒアリングする必要があります。その際に知識がなければ、聞くべき要件も聞かずに進めてしまうかもしれません。

ここでもし「BtoBのSaasのこともよく分からないし、デザインのこともよく分からないが、このデザイン会社は費用が安いのでここに依頼しよう」などという浅慮で発注すれば、それは地獄の釜の蓋が開く合図です。

少ないコミュニケーションでヒアリングを済ませ、上がってくるデザインは思うものと違うものばかり。そんな成果物にありもしない知識でリテイクを指示していく内に、開発期間も残りわずか、費用も使い果たし、そのプロジェクトは炎上を始めるのです。担当者側も上司から責任を求められ、深夜残業に至る日も遠くはありません。

しかし、知識量が豊富なだけでも不十分です。もう一つ、着目すべき点があります。

デザイン会社のヒアリングの丁寧さ  

ヒアリングの丁寧な会社は、その分やはり費用も発生しますが、柔軟に対応してくれる可能性も高くなります。

ヒアリングの丁寧さがどんな風に魅力的な点であるのか、という説明ですが、ここが丁寧な会社は「発注者がどんなものが欲しいのか分かっていなくても、それをうまく引き出してくれる」という点です。

ざっくり「あの有名なSaasみたいな感じで~」と話しても、「あのSaasのどの部分が欲しいのですか?」「その機能はどういった意図でほしいのですか?」「その機能は恐らく売り上げにあまり効果がありませんが、開発費用はこれだけ増えることになります。本当に欲しいですか?」と密にヒアリングをして、プロジェクトを適切な方向に導いてくれます。

発注担当者として経験が少ないのであればあるほど、こういったヒアリングが丁寧なデザイン会社は頼もしいプロジェクトパートナーになるでしょう。費用が多少上がるとしても、こういった会社を選ぶべきです。

まとめ  

今回は、デザインそのものの作業量、難易度、そして連携を取る上で重要なヒアリングにおけるデザイン会社自体の知識量、丁寧さということに着目して説明しました。

画面数が増えればデザインの作業量が、複雑になれば難易度が上がり、その分費用が上がります。

また、専門知識が豊富ならその分ヒアリングがスムーズに運ぶ分、ヒアリングが丁寧なら発注側でイメージがあやふやでもプロジェクトそのものが炎上リスクを低く進められる、という点で費用が上がります。

ですが、それぞれの要素はやはり良し悪しがあります。発注側で明確なイメージがあるのであれば、別段ヒアリングに長けたデザイン会社を選ぶ必要もないのです。ただし発注側として経験が少なく、不安であるようであれば、しっかりとしたデザイン会社に依頼することが、回りまわって正解かもしれません。